バロック音楽の夕べ

 昨夜、友人のチエコさんご夫妻が営まれている武庫之荘のカフェ・ジェンテ<クラシック音楽の夕べ>があった。演奏者はバロック・ヴァイオリンの河内知子さんとヴィオラ・ダ・ガンバの中西歩さん。

 お陰でバロック音楽はホールではなく、演奏者の息づかいが伝わる床続きの部屋で聴くのが一番!とあらためて感じる素晴らしい体験ができた。お二人の気品ある存在感と落ち着いた古楽器の音色に魔法をかけられ、中世の古城で催されたコンサートに迷い込んだような嬉しい錯覚を覚えた。おまけにおいしいご馳走と飲み物も演奏の合間に味わえたのだ。

 演目は、耳慣れたバッハのメヌエットに始まり、テレマンの無伴奏ヴァイオリン <ファンタジー>コレルリのヴァイオリンソナタなどたっぷり聴かせていただき、アンコール曲のビバルディーの<四季>冬 でしめくくられた。

 中でも一番心に残ったのは、バッハのインベンションである。ピアノの練習曲として子どものときから馴染みの曲であるし、大人になってからもチェンバロなどでもよく耳にする機会はあったが、どうしてもそれほど好きになれない曲であった。昨夜左手パートをヴィオラ・ダ・ガンバ、右手パートをバロック・ヴァイオリンが演奏した。このとき、かって苦手だったバッハのインベンションが、突如命を帯びるふたつの生き物のように空間を流れ始めた。二声の醍醐味を存分に味わわせていただいたように思う。これを機会に是非またお二人の古楽器のデュオを聴かせて頂きたい。