試験焼却~命が<試験>される

 11月29日9:45から、ぶっ続けで翌30日夜間まで、大阪市此花区の環境局舞洲(まいしま)工場で、大阪府と大阪市は岩手県の震災瓦礫100トンの試験焼却を強行した。100トン燃やしただけでそれこそ直ちに人体への影響は分からないかもしれないが、舞洲工場から10キロ離れた西宮市香露園浜に住む筆者のその2日間の生活はどうだったか。

 

 洗濯物は外に干せないので室内干し。窓も閉めたままの2日間だった。何時から何時までの試験焼却かも公表されず、(私は電話で聞いたがなかなかつながらなかった。同じように不安に思う人たちがたくさんいたのだろう。)目立たないようにそれは執り行われた。そのようなことを公表し、注意を促せば、瓦礫焼却への不安を煽ることになるからだろうか。福島原発事故の時、住民の健康を守ることは後回しになり、放射能の流れが一目で分かるスピーディーの公表はされず、多くの人たちが安全な避難を阻害され被爆させられた。それと今回の試験焼却は、放射能の量は桁が違うかもしれないが、住民の健康や普通の暮らしが、何の対策もなく脅かされたことには違いがない。

 

 窓を閉め切り外の空気を吸うことができず、花の水遣りもしない、どうしても外出しなければならない時はマスクをするという2日間を経験して、私がどんなときに「幸せ」を実感していたかをあらためて感じた。

 洗濯物を干して太陽に感謝し、ベランダの花に挨拶しながら水遣りをする。本当にささやかなことが日々の幸福感を生み、生きる力になっていたのだ。孫が遊びに来たら一緒に散歩する。孫がわたしにくれるプレゼントは、落ち葉や道端の小さな草花である。

 

 この試験焼却をかたち通りに行えば、年あけにこの360倍の震災瓦礫を受け入れ焼却することが予定されている。あの2日間の窓を閉め切る生活が1年続くことなど、想像を絶する。そうなれば、岡山から時おり訪れる幼い孫と散歩するというささやかな喜びはもう望めない。落ち葉や松ぼっくりを拾わないように注意するどころではない。「こちらは放射能の危険性があるから小さい子は来ないほうがいいよ。」と、息子たちに泣く泣く云わなければならないだろう。

 真夏でも我が家はクーラーをつけず、自然の海風で暑さをしのいでいた。窓を閉め切るクーラー漬けの夏などごめんである。

 決して自己中心的なわがままを言っているのではない。放射能を浴びた物質は燃やさないで厳重に管理することになっているのである。

 外の空気をいつでも吸う自由、洗濯物を干し太陽に感謝する自由、風を感じる自由、幼い子らとときおり 散歩する自由がほしいだけである。

 それは人としてあたりまえに生きる自由であり、わたしが詩を書く命の源である。 

 

 

 

コメントをお書きください

コメント: 3
  • #1

    TE-2 (日曜日, 02 12月 2012 20:40)

    そんな事実があったんですか。。。
    あまりニュースではしていないので、
    知らなかったです。ついに強行されたんですね。ショックです。

  • #2

    望月 (月曜日, 03 12月 2012 08:31)

     こんなに近くに住んで、直接被害を被っているわたしにさえ正確な情報が伝わらないのですから、遠くのあなたが知らなくて不思議はありません。
     瓦礫焼却については、あたりまえのささやかな日々の生活と、大切な幼い人たちの健康を守るためにさいごまであきらめませんから。応援よろしくお願いしま~す!

  • #3

    kyoko (月曜日, 10 12月 2012 15:59)

    反対の声がたくさん上がっていたのに闇討ち的に強行されたのですね。
    地元でもニュースにされなかったのですか?選挙運動で忙しい市長さん
    責任者としてちゃんと近くで体験すべきですよね。原発推進派が政権取りそうという報道、何とか番狂わせさせたいものです。