私のお雛さま

  女の子のいない我が家に、雛人形はなかった。それを淋しいと思ったことはなかったはずだが、少年たちがそれぞれの目標を目指して巣立ったあと、桃の節句を自分のために過ごすことを思いつき、小さな立ち雛様を手に入れた。今年はもう一組、ガラス細工の現代アートの雛人形が加わった。寝室の東向きの窓は、ちょっとしたものを置く出窓になっている。そこに2組のわたしのお雛様を飾った。

 今朝、ガラスのお雛様は朝日を受けて宝石のように輝いてみえた。3月の朝の光がこんなに強いものとは知らなかった。生き物の生命が吹き出るこの季節に、命を生み育てる女の子の節句があることが納得できた。

 訳あって当分の間家族が増える。雛人形を飾った日、仮の娘として我が家で暮らす人がやってきた。