3・11の灯

 今年も<3・11神戸からの祈り>が三宮マルイ前であった。19年前阪神間で暮らしてきた者は、心にあのときの死者を抱いてその後を生きてきた。そして3・11原発事故後に生き方暮らし方の舵を大きく切った者もいる。そんな人たちの集いは、厳粛で真剣な雰囲気に包まれていた。

 原発避難者母娘に深く関わっておられる光円寺の後藤さんのお話や、福島県伊達市から避難されているアトリエとおのさんのライヴペインティング・絵を通した語りから、原発避難者の苦悩や出会い、発見の一端に触れることができた。年月を重ねる毎に闇の濃さは深まるが、深い闇のなかでこそ出会えた光の存在も確かめあいたい。

 

 3・11の形に今年もキャンドルが点され、突然街の一角が鎮魂のステージになった。そんな素晴らしい場面で、拙詩<祈り>をバッハの無伴奏チェロ組曲第五番 サラバンドにのせて朗読させて頂いた。自転車を漕ぐ人の力で電気を起こし、音楽とわたしの声が三宮マルイ前を流れる。東日本大震災の死者・行方不明者・避難者の数を、毎年自分で調べ詩のなかに織り込んでいる。これはただの数字ではない。その数だけ様々な日々の暮らしがあった。泣いたり笑ったり怒ったりする普段の感情や特別の想いがあった。

 

 最後に名司会者の小橋さんのリードで<花は咲く>をもう一度歌うことで浄化作用の効果もあり、<3・11神戸からの祈り>第一部は無事終わった。皆様お疲れさまでした。