蕾を数える

 うちの小さなベランダにも確実に初夏がやってきた。母が亡くなったとき友人が私を慰めるために贈ってくれた紫陽花が、小さな花鞠の萌芽を10個以上つけているのに今朝初めて気づいた。

 長男の連れ合いが3年前の母の日にくれたジャスミン、開くと白い花なのに蕾は赤紫色をしているのは何故なのだろう。香りがまだ全くないのも不思議だ。

 そういえば生まれたばかりの吾が子も、こんな赤紫色をしていた。すぐに肌の色は落ち着いて伸びや欠伸をし、私たちはただそれだけで手をたたいて喜んだ。

 命あるものが息をして傍に居るだけで、わたしたちは十分満たされていた。それ以上のものは何も望まなかった。子の命、存在に謙虚であった。花に開き方の注文をつけないのと同じく、嬰児(みどりご)に息の仕方の注文をつける親はいない。