水と樹と風 そして

 母の胎内にいたときは羊水に浸っていたからなのか、私は水のある場所に居ると無条件に心が落ち着く。わが町香枦園は夙川と小さな湾、淡水と海水両方の水のある風景に恵まれている。    

 樹木に囲まれるひと時も大切だ。夙川添いの道の樹木は、最近富に鬱蒼と繁りはじめている。道の両側から樹の枝が張り出し緑のアーチを形作っている。夙川といえば桜と反射的に出てくるが、幹が太くて立派な榎や楝も目立つ。「松葉坂」など松にちなんだ坂道があるだけに松の樹も多い。ニセアカシアや楝が花を散らし、夾竹桃が咲くまでの緑一色の川辺を自転車で通るとき、様々な樹々が吐き出す酸素で全身洗われたような気分になれる。海風と陸風の通り道なので、吹く風も心地良い。

 ああそれだけではない。友人知人先輩お仲間・・・それぞれ呼び方は違っていても、縁あって同時代を生き、知恵や力や勇気をいただいている方たち。風景から頂いたものをことばにして返していく繋がりがあるから、今日も一日充実した時を味わえたのだろう。これらの全てに感謝して一日を終えよう。