舞踊団《風》の演目

 いよいよ霜月が終ろうとしている。昨日、知り合いの月命日のお参りを済ませ、雨上がりの夙川添いの道を久しぶりにゆっくり歩いて帰った。雨は止んでいたが、風はまだ吹いている。わたしはあることを期待しながら歩いていた。そして期待通り、あの現象が数メートル前方で起きた!桜の濡れ落ち葉は道に貼りついてしまっているが、エノキの黄葉はやや厚く水を弾くコーティングがあるらしく、一陣の風にエノキの落葉が身を起こし、風向きを指して群れを成して走るのだ。エノキの根元にはたくさんの黄葉が積もっていて、そこに風が吹くと一斉に落葉が生き物のように動き出す。年に一、二度遭遇できたら好運な光景である。風にも落ち葉にも意思があり、意図的に落ち葉の輪舞の演目が設けられ、そこに一観客として居合わしているような不思議な気分にさせられる。    


♪どっどど どどうど どどうど どどう、

青いくるみも吹きとばせ

酸っぱいくゎりんも吹きとばせ

どっどど どどうど どどうど どどう♪


風や木々と一体になった宮沢賢治の心の声が聴こえてきそうな昼下がりであった。