思う壺にはまらないために

 今国会では、「安全保障関連法案」を巡り与野党の対立が深まっています。衆議院憲法審査会の参考人として呼ばれた3名の憲法学者が、3人とも「憲法9条の解釈を変えて、集団的自衛権を使えるようにしたことは違憲である。」と延べたからです。たとえ政府のお墨付きの憲法学者だとしても、それまでの主張を変える訳にはいかないのです。喩えて言えば、地動説を唱えていた学者が政府のお抱え学者になったとたん、急に天動説を唱えるわけがないことを、与党に胡坐をかく政治家たちはどうやら理解していなかったようです。学者は、そう簡単に政府の思う壺にはまれないのです。それまでの自らの実績を否定することになってしまうのですから。

 

 菅義偉官房長官は、「違憲でないといっている憲法学者もたくさん居る。」と慌てて苦し紛れに述べましたが、民主党の辻元清美議員に「たくさんとは具体的に誰のことですか?」と尋ねられてたくさんの名を挙げることができず、「はっきり云って数の問題ではない。」と苦い顔で言い逃れを言っていました。

 戦後70年、守ってきた平和憲法を覆す国会での与党側の主張が、このような曖昧で嘘に満ちたレベルの低いものであっていいわけがありません。70年間、他国の民を一人も戦争で殺していない国民が、アメリカが戦う戦闘現場に共に赴くことを決める審議が、数の論理で押し切られるのでなく、民意に添った結果に落ち着きますよう、私も微力ながら2015年の6月を悔いがのこらないよう過ごしたいと思います。