六甲茜

 夕焼けが美しい季節になった。太陽が六甲の山並みに残していく巨大な烽火は、海に静かに燃え拡がる。この色彩だけで表現された壮大なメッセージに太刀打ちできることばをわたしはもたない。

 裏切りや誤魔化し、傲慢、不誠実、・・・。愚かで未熟な人間が犯す様々な罪を、夕焼けが焼き尽くして毎日新しい日が来てくれたらいいのだけれど。そうもいかない人間社会。だからこそ、空や海に太陽が残していく雄大な映像のなかに身を置き、この水惑星の小さな生き物に過ぎないことを確かめる<たまゆらのとき>が、大切なのかもしれない。