暗雲撤去

 9月からマンションのベランダ改装と外壁塗装工事のため、全体を覆う<蚊帳>の中で暮らしていたが、今日ようやくその黒いベールが撤去された。後は足場の鉄骨がなくなればやっともとの風景を取り戻す。居間に入る陽射しがなんと明るく温かいことか。太陽にあらためて深く感謝する。工事中外に避難していたベランダの緑の仲間たちも帰ってきてくれた。

 帰ってきたローズマリー、紫陽花、ジャスミンたちに如雨露で水をやりながら、ふと2年9ヶ月ものあいだ、自分のそれまでの居住空間での日常生活を奪われ、あるいは脅かされている人々に想いが飛んだ。たった数日間の先がみえているささやかな<非日常>に対しても人はこんなにもダメージを受けているのに・・・。福島の友のことを想った瞬間こみ上げてしまった。故郷を出て新しい生活を切り開いているAさん、福島でお母さんたちとのネットワークを築いているBさん・・・いずれもなんと懸命に生きておられることか。

 

 比喩としての暗雲はますます日本列島を被い尽くそうとしているが、太陽系第三惑星に住む一人ひとりがその光と熱を必死で吸い、闇ではなく光の方を向き続ける覚悟だけは、どこにいても共有できる。