カルガモと7羽の雛たち

 5月に紹介した対のカルガモたちは、どこで巣作りをしていたのでしょう。無事雛が誕生していました。一昨日の朝の5時頃、育ち盛りの雛7羽と、お母さんカルガモ一行に出会いました。

 まずお母さんの堂々とした子育てぶりに目をみはりました。夙川には川底の高低差からくる小さな30センチくらいの人工の滝があります。母カルガモは、そこをヒョイと跳び越えて何事もなかったかのように、高い方の流れを川上の方に先に行きます。彼女は一度も振り返らないのです。人間の子なら泣いて母を呼び止めるであろうシーンですが、哺乳類と違い、いたってあっさりしている親子関係です。雛たちも当然のように何度もチャレンジしては失敗し、跳び越える場所を変えたりしながら、母親と同じ高い方の流れに全員無事辿りついていました。母カルガモも雛たちも、それを当たり前のようにやってのけていました。雛を天敵から守り、無事育て上げるためには、無駄な動きを一切しないで、「わたしの子ならちゃんとついておいで!」と背中で教えているようでした。

 カルガモの親子と別れて河口に向かって歩いている時、知らない婦人が「どこにいます?」と突然尋ねてこられました。きっとさっきのカルガモ親子のことだとすぐに理解できましたので「あっちの方にいましたよ。」私も主語を抜かして応えますと、その方は「有り難うございます。」と礼を言われ、いそいそと川沿いの道を小走りで行かれました。

 

 ここは神戸大空襲のときには、たくさんの重症の負傷者が運び込まれた病院に通じる道です。地域の人々が、小さなカルガモの雛たちの成長を見守ることのできる平穏な日常が、再び侵されることのないことを思わず祈りました。